ご挨拶
テーマ「今こそ原点回帰、未来へと紡ぐ看護学教育の知の創造」
COVID-19による世界的な感染拡大は、突如として我々の日常に危機をもたらしました。
それは現代のエッセンシャルワーカーと呼ばれる看護職においても同様です。
看護師の手は、その人の苦痛を癒す手となり、今を生きる励ましの手、そして命を支える手でした。
しかしCOVID-19の蔓延は、人と人との距離を必然にし、病む人に向き合い、触れることに幾重の防護が余儀なくされました。
これまで看護学教育において重視してきた病む人との人間関係、そして身体に関わることで心を癒すという看護を、私たち看護教育者は、今、目の前に居る学生たちにどのように教え、伝えていけば良いのでしょうか。また、看護基礎教育を修了した卒業生が看護師となっていくために、どのような教育が必要なのでしょうか。
私たちは、それを開錠するための一つの鍵を、2021年度第31回学術集会「COVID-19 の危機から学ぶ看護学教育のグローバルイノベーション」に得ました。
国や文化を越えたダイバーシティ&インクルージョンの観点から看護学教育のイノベーションへと発進する力は、一つの潮流を生み出していくのです。
それを受けて2022年度第32回学術集会では、難航するこの状況下だからこそ、今、改めて、人が人に関わる人間教育としての看護学教育について、その原点に立ち帰ってみたいと思います。
看護とは何か、またそれを教え学ぶ看護学教育とは何であるのかという学問的な問い直しは、現代の時勢から付与された契機ともいえます。
状況に応じつつ、これからの時代をしなやかに乗り越えていくために、看護学教育の原点回帰を踏まえた未来志向的な看護学教育の知の創造へと、この機を逸することなく取り組んでみたいと思います。
その芽は、日々看護学教育に力を注いでいる皆さんの教育実践の中に秘められています。
本学術集会への参加、発表、交流を通して、看護学教育の新たな地平を皆さんとともに、見出していきたいと思っております。
一般社団法人 日本看護学教育学会 第32回学術集会
会長 前川 幸子
(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部 看護学科 教授)